遭難の報道に思うこと

post_IMG_86008月11日に1人で栗駒山に入山した男性が、帰宅予定時刻を過ぎても帰宅しないことから、家族が警察に通報し、翌12日朝に捜索隊が自力で下山してきた男性を発見しました。報道各社は、男性が遭難したとし、捜索隊が出発した直後に救助されたという報道をしました。

登山者が無事に下山できて喜ばしいですし、ご家族や関係者も安心されたことと思います。捜索にあたった警察等の方々はお勤め本当にご苦労さまでした。

さて、今回の報道を見て、いくつか違和感を覚えたので記しておきます。

まず、登山者は道迷いして下山時間が大幅に遅れ、山中で予定外の露営をしたに過ぎず遭難していません。遭難とは生命に関わるような危険に遭うことです。また、遭難を心配されたご家族が警察に通報され、救助隊が捜索へ向かいましたが、直後に発見され自力で下山しているので、救助されたと言えるのかどうか。報道各社の記事や題名は、事実と異なる過剰な表現や内容となっているように思います。
TBC東北放送は、登山者の氏名と年齢、職業、住所まで報道していますが、犯罪者でもない登山者の個人情報を公開する必要があったのでしょうか。この報道姿勢の裏には、COVID-19の感染拡大がとまらない今、病院や警察に余計な負担をかけかねない行楽は厳に慎めという強烈な主張が感じられ、世論を誘導しているようにも勘ぐりたくなります。案の定、記事を真に受けた読者がSNSで一斉に登山者を非難していますが、その一方でTBC東北放送の報道姿勢に問題があると感じた視聴者もたくさんいらっしゃったようです。

最後に、危機管理について触れておきます。
栗駒山は標高1,626mの低山で主要な登山道は初心者向きですが、今回の舞台となったであろう表掛(御沢)登山道などは、体力と経験を要する中級者以上向けの登山道で、岩手山登山に匹敵する程の体力を要します。この登山者は8時頃に登山を開始したとありますが、盛夏の登山では高温による熱中症、午後は雨や雷の確率がぐっと上がり危険性が高くなりますので、早朝から登り始めお昼頃に下山できるように計画する必要があります。このweb siteでは、表掛(御沢)登山口を遅くても7時までに出発するように呼び掛けていますが、この時季は6時頃までに出発すべきだと思います。
また、YAMAPや山と高原地図のような、SmartphoneのGPS機能を活用するApplicationを利用していたら、道迷いすることはなかったでしょう。表掛(御沢)登山道は御沢では電波の圏外となり電話が使えませんが、GPS機能は問題ありません。ただし、電池の管理が重要となります。
登山者が行先と帰宅時間を家族に告げ、ご家族が早期に警察に連絡したことは、とても良い対応だったのではないでしょうか。

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