残雪期の登山情報

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残雪期の登山とBackcountryのための情報です。

栗駒山周辺の主要道路が冬期通行規制される11月から5月の大型連休頃まで、栗駒山頂に最も近い登山口は、表掛(御沢)と裏掛(新湯)登山口である、宮城県栗原市栗駒耕英地区の栗駒高原駐車場(いこいの村跡地)になります。

厳冬期は猛烈な季節風の影響を受け、標高の割に登頂が容易でない栗駒山ですが、3月中旬以降は天候が安定する日が多くなり、比較的安全に登山が出来るようになります。

雪が登山道と灌木を覆い尽くす厳冬期から残雪期は、栗駒高原駐車場を起点に、中央と東栗駒登山口である「いわかがみ平」を経由し、東栗駒登山道と新湯沢に沿って直登し、山頂を目指すのが最短となります。

登山口から「いわかがみ平」までは山毛欅の樹林帯を道路の右側に沿って登ります。「いわかがみ平」までは風の影響を受けにくく、樹林帯では雪崩が発生することは滅多にありません。

積雪が最も多い時期は3月中旬から3月下旬にかけてで、「いわかがみ平」の建造物は屋根まで雪に埋もれます。避難小屋は入り口が塞がり、利用できませんのでご注意ください。

「いわかがみ平」より高い稜線上は風が強くなることが多く、山頂まで遮るもののない雪の斜面が広がるため、季節風の強い日は猛烈な風にさらされることがあります。「いわかがみ平」で風がだいぶ強いと感じたら、山頂付近では台風並みの猛烈な風が吹き荒れていることが多いため、勇気をもって撤退することが賢明です。
登り始めから「いわかがみ平」までが急登なので大量の汗をかきがちです。その後、稜線上で風に冷やされると低体温症になる可能性が高いので注意が必要です。

「いわかがみ平」から山頂までは、新湯沢に沿って登下山するのが分かりやすく安全ですが、4月以降は新湯沢の雪融けが急速に進み、東栗駒登山道の渡渉点上部での数ヵ所で沢と切り立った崖が露出します。視界不良時は沢に転落しないよう、新湯沢の右岸を沢にあまり近寄らずに歩くのが安全です。
風が強い場合は、中央登山道より東栗駒登山道と新湯沢に沿って歩くと、稜線の陰になるので風がいくらか弱まります。

山頂付近は勾配がきつく、冷え込む早朝は凍結して滑りやすいので、4本爪以上の簡易的なCramponsがあると良いでしょう。ただし、日が昇り気温が上がるとすぐに表面が溶け始めるため、登山靴だけでも歩けます。
3月下旬以降には、新湯沢と山頂付近に大きな亀裂、雪割れ(crack)が出来て、日増しに大きくなっていきます。新雪に隠れている小さな亀裂もたくさんあります。

雪がふかふかの3月上旬までと新雪後、そして雪が緩む4月以降の気温の高い日は、踏み抜きで歩くのが大変なので、Snowshoesがあると良いです。また、栗駒山の残雪期の一般的な登山なら、Ice axe(Eispickel)は不要で、Trekking poleの方が使い勝手があります。


この日は天候に恵まれ、Kurikoma Blueに引き寄せられて、たくさんの岳人とskierが登っていました。
前日に積雪があり、朝方に冷え込んだせいもあって、雪は硬く締まり踏み抜くこともなく楽に歩けました。
「いわかがみ平」の建造物は1階が見え始め、避難小屋も利用できるようになっています。

中央登山道は中間点付近の夏道が露出し、標高1,400m以下は薮がだいぶうるさくなっています。東栗駒登山道は新湯沢の渡渉点まで完全に雪に覆われ、東栗駒の稜線は厳冬期でも雪が積もらず、夏道が露出しています。

山頂は地表が露出し、霧氷と雨氷が見られました。山頂からの眺めはいつもながら最高で、鳥海山、月山、焼石連峰が綺麗に見えました。ここは奥羽山脈の大展望台です。条件が良いと、岩手山、早池峰、蔵王連峰まで見ることが出来ます。

Backcountryを楽しまれる方は、山頂から新湯沢沿いに滑走する場合は、新湯沢を越えないように、その右岸を沢にあまり近寄らずに滑るのが安全です。

焼石連峰を背景に滑走するskier

山頂から薮に阻まれず、途切れずに滑られるのは4月中旬頃までというところでしょうか。

除雪は「いわかがみ平」まで完了し、高い雪の壁から落下すると致命傷になりかねないため、こちらも注意しながら安全に楽しんでください。今季は積雪が多いので、山頂付近と新湯沢沿いは大型連休までたっぷり遊べそうです。
東栗駒山稜線から東南斜面はだいぶ雪が溶け、新湯沢下部は沢が完全に露出し増水しているため、上級者以外は立入るべからずです。


最後に、栗駒山は雪山入門の山として初心者にお勧めと紹介されることがありますが、季節風が吹き荒れる厳冬期は、極めて厳しい自然環境で、植生がその厳しさを表しています。残雪期でも真冬のような天候になることがよくあります。自然は、謙虚でない人や想像力の乏しい人に対して、容赦無く牙を剥き命を奪います。初めての方は必ず経験者に同行し、空気は読めなくても良いけど最新の天気を読み、入念な準備を怠らないようにして楽しんでください。

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